勉強を通して何を学ぶか
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よつば個別指導塾、講師の木田です。
いつも投稿をご覧いただきありがとうございます。
本日は過去の教え子のエピソードを紹介したいと思います。
なぜ勉強するの?勉強のゴールって何?
5、6年ほど前に教えていた生徒さんになりますが高校受験を控える女の子がいました。
この子はとにかく自分に自信がなく、学校の授業中に先生にあてられた時も、答えられるのに「わかりません」と答えてしまう癖がある、非常におとなしい子でした。
そんな彼女は、中学3年生の夏の終わりに、大きな壁に直面します。
偏差値66ほどの難関校を志望していた彼女は、努力はするものの模試でなかなか良い判定を得ることができませんでした。
そんな彼女が私のところに来て、泣きながら話したんです。
「先生、私、どうして勉強しているのかがわからなくなってきました。やってもやっても成績上がらないし…」と。
私は、当時尊敬していた先生の受け売りですがこう答えました。
「勉強は、高校に行くためにするんじゃないよ。高校はゴールじゃないんだ。もちろん大事なことなんだけど、それがすべてじゃない。こう考えてほしい。『勉強を通して、何を学びたいのか?』たくさんのことを学べるけれど、今君は『しんどい時に踏ん張れる力』を学ぼうとしてる。」
ただただやみくもに勉強をしていると、嫌になってしまうことはよくあります。
しかし「勉強する」という行為に、それ以上の価値を見出すこと、これも勉強をする意義といえるかもしれません。
勉強のスイッチが入った後の生徒の集中力は凄まじい
それからその子は、元来素直な性格だったことも手伝って、圧倒的な努力を始めます。
土曜日に開校のため出勤すると、すでに入り口の前に人影が。
この時点でびっくり仰天ですが、そのあと夕ご飯までずっと勉強。かと思ったらご飯を食べてまた塾に戻ってきて勉強。
「ほんとに大丈夫?」とこちらが思ってしまうくらいの頑張りを見せてくれました。
その表情は決して暗いものではなく、大変ながらも充実している様子がありました。
そんな日々が入試直前まで続きました。
やりきった自信 – 努力が実を結んだ時
入試の前日、
「先生、わたし、もう志望校うからなくていいです。」
わたしとしては「!?!?!?!?!?!?!?!?!」
またもやびっくり仰天です。
ただ、彼女の目はマイナスな雰囲気は一つもありませんでした。
「わたし、ここまで死ぬほど頑張りました。ここまでがんばったから、もう、これでダメでもいいです。通った高校で頑張ります。やれることはやりました。」
と、悟りを開いていました。
『ああ、この子は受験を通して強くなったんだな。本気で「頑張る」っていうことをやりきったんだな。』
そう感じました。
そして緊迫の入試当日を乗り越え、合格発表の日。
たくさんの生徒が塾に報告に来てくれました。
「ありがとうございました!」そう言って去っていく子。
力及ばす、涙を浮かべている子。
何も言わずに、ただ親指で「グッド!」のポーズだけ私に見せて立ち去ろうとした男子。
(恥ずかしさからこうしたようです。かわいいヤツめ)
本当にいろんな子がいました。私もそのたびに一喜一憂し、感情がぐちゃぐちゃになる日です。
その子がやってきたのは夕方でした。
入口の前で今か今かと彼女の来塾を待つ私。ソワソワしながら待ち続けると、
「せー―――んせー――――い!!!!!!」
遠くから叫び声がしました。
見ると信号の先にその子が立っていました。
「♪○×△・・・ wdふぇrgy」
車が走る音と、どうやら号泣しているようで、なんて言っているのかはわかりません。
周囲の通行人たちも「なんだなんだ!?」とその子のことを見つめます。
合格発表の日で制服を着ていたので、事情は察してくれていたことでしょう。
彼女の表情は笑っているようにも見えますがズビズビ泣いているので判断がつきません。
『どっちだ!!??!?!?合格したのか、不合格なのか!?!?!?』
その場にいた全員がそう思っていたと思います。
そして信号が青になり、彼女は駆け出します。
そして自分の足につまづきます。
「あっ!!!」
私の口から出る悲鳴。
しかし次の瞬間、まるで陸上部のクラウチングスタートのようにシュバッ!っと立ち上がり、駆け寄ってきました。体育だけがどうしても苦手で内申点で苦戦していた彼女が、自分の限界を超えた瞬間でした。
そして「うがっっだああああああ~~~~・・・」
塾の前で泣きじゃくりました。通行人一同拍手。
私は「おめでとう!!!!!」と大喜びしつつ、はたからみると私が泣かせたみたいに見えなくもなかったので素早く塾内に案内しました。
彼女は、受験を通して、「やり切る力」を学びました。
きっと彼女は、学力はもちろんのこと、それ以上に大切なものを得て、高校生になりました。
勉強を通して何を学んでいくのか。これには模範解答などなく、人それぞれで正解が違います。
しかしながら、ただただ「知識」をつけ「学力」を伸ばすだけでは、もったいない。
皆さんとどのように向き合っていくか
目の前の生徒さんが塾を去っていくとき、『どんな人に成長していてほしいのか?』
そんなことを考えながら日々の授業を行っております。
勉強に悩みはつきものです。言葉に出せる子、なかなか打ち明けられない子。
一人ひとりの変化に気付く力を最大限に発揮して、今後も向き合っていきたいと思います。